屋根瓦にセメントを塗ってみた – 3年後

約3年前に屋根瓦(セメント瓦)にセメントを塗るという記事を書きました

その後どうなったのかというお話です

簡易説明

築後32年間、一切のメンテナンスをしていないセメント瓦の屋根。ネット調べてみると、セメント瓦の塗装は10年程度しか持たず、地肌のまま雨ざらしにすると瓦からカルシウム分が抜けてしまい、割れたり雨漏りになったりする原因になるとのこと。おそらく限界が来ているであろうセメント瓦を何とか長持ちさせることができないかと、セメント瓦にセメントを塗ってみたのでした。

現在

あれから塗装をすることなく3年間雨ざらし

塗った直後は真っ白な屋根でしたが、やや苔が生えて黒ずんでます。やや黄ばみがかってるのも気になります。

こっちは北側

上4段はモルタルを塗ってみたところ、右上の白い部分がセメントのみ、黒ずんでるところはノータッチの部分(35年雨ざらし)。白黒黄土色のコンポジション

モルタルは表面がざらついてあまり見た目が良くないですね。劣化したセメント瓦が砂の塊みたいなものなので、純粋なセメントを塗るだけのほうが良さそうです。

何も塗ってない部分は劣化が進んでいるようで、下部の瓦が数枚割れていました。雨は下に流れていくので、下部の瓦が常時濡れた状態になりやすく、割れにつながりやすいようです。セメントを塗ってない部分は苔の量も段違い。

3年ぶりのケルヒャー。

軽く撫でるだけで苔が落ちていきます。セメント防水剤を混ぜた効果があったかな。

塗った直後ほどではありませんが、白さ復活です。

これがセメントを塗ってから3年雨ざらしにした瓦の表面

ちょっと砂粒が見えてきていますが、間にはセメントが詰まっていますね。余分な量が流れて表面が滑らかになったような気がします。

こちらがセメントを塗る前の瓦の肌

砂粒の塊なのが分かります

こちらはセメント塗りたての肌。ガチガチですね。

塗り方としては、水500mlにセメント防水剤25ml、ポルトラントセメントをシャベル3~4杯、ソフトクリーム程度の柔らかさにして塗ります。塗る前に瓦に水を撒き十分に湿らせ、スポンジにセメントを取り瓦の表面に塗りつけます。ギリギリ水が垂れない程度の薄さで塗ります。厚みを出すのではなく、セメントを中にしみこませるようなイメージですね。染み込むかは分かりませんが

あと瓦の水が抜ける下部にはマスキングをしたほうが良いです。穴をセメントで塞いでしまうと水が抜けなくなってしまうため、雨漏りの原因になってしまいます。今必死にタガネで削ってますorz

セメントを塗った効果があったかどうかで言うと、一応あったようです。

瓦のクラックがセメントを塗ったところで止まっています

“一応”効果があったというのは、瓦が割れる原因が瓦の表面では無く、主にこの釘穴にあったからです。

セメント瓦が割れるメカニズムは、水漏れ→桟木が水に濡れる or 釘穴に水が入る→釘が錆びて膨張する→小さなクラックが入る→クラックが大きくなり瓦が割れる→連鎖的に下の瓦の釘も錆びる、と言った流れです。(もしかしたら釘穴を開けるときにクラックが入るのでは・・・)

ここから水が染み出して桟木や防水シートを濡らし続けます。

セメント瓦に塗装をしても屋根の寿命は延びないと言う動画を見ましたが、理由はここにあるようです。塗装をするなら瓦を外して釘穴まで塗らないといけないですね。

こういう瓦が200枚中20~30枚見つかりました。釘を使っている瓦は1~2割、末端のほうになるとほぼ全滅と言った感じです。瓦を掛ける桟木もだいぶ傷んでいるようでした。

弱った桟木を当て木で補強。

桟木の支えになるように新しい木を真下に打ち付けました。これなら境界を気にせず継ぎはぎで補強ができます。

セメント瓦の吸水実験

セメント瓦には防水性能がないと言いますが、どれくらい水を通すものなのか実験をしてみました。

瓦の裏にキッチンペーパーを貼り付け、瓦の表面だけを濡らし、どれくらい水を吸うのか。前後の重量差を測ってみようという実験です。(自由研究っぽくなってきた!)

右からA, B, C, Dとすると

A:35年間雨ざらしにしたセメント瓦

B:32年目でセメントを塗り、3年雨ざらしにした瓦

C:35年目でセメントを塗ったばかりの瓦

D:Bの瓦に灯油シリコーン(防水)を塗った瓦

乾いたキッチンペーパーの重量は1.9gです(4枚いずれも重量差は無し)

1時間ほど表面が乾かないように数分おきに水を掛けます

1時間後

Aの瓦

キッチンペーパーは濡れてる様子はありませんが、瓦が湿っているのが分かります。

Bの瓦は、湿った感じも少なく、キッチンペーパーも濡れてないようです。

CとDも同じような感じなので割愛。

そして、結果は・・・

なんと、どれも2.0g。一切、水を通しませんでした。

えー・・・

逆の実験もやってみました

水で濡らして絞り7.5gになったキッチンペーパーを瓦の裏に貼り付け、昼間の13時~15時の間、瓦の表面に日光を当てました。

瓦に防水塗装をすることで湿気が籠りやすくなるんじゃないかと思っての実験です。

2時間後、瓦の表面はカラカラに乾いています。外気温は30℃

瓦の裏はまったく乾いている様子がありません

結果はどれも6.5~7.1g で殆ど重量が減っていませんでした。減った重量はラップについた水滴の分だと思います。

これで分かったのは、セメント瓦は割れない限りは水を一切通さないということです。

結論: どれも変わらない(瓦だけに)

割れた瓦の修復

よくあるのが、セメント瓦を製造しているメーカーがもう無いため、瓦が割れてしまったら葺き替え工事しか方法が無いですよという業者の謳い文句。

しかし私はYoutubeのDIY動画を漁って、とっておきの方法を見つけました。

エポキシパテと呼ばれるものです。

有名なのが重曹の上にエポキシを垂らして接着や穴埋めをするというものですが、これの亜種でセメントエポキシという方法を紹介している海外の動画を見つけました。

この3枚に砕けた瓦。

これをセメント+エポキシで接合していきます

割れ目にセメントの粉を詰めて、そこにエポキシを垂らすと、煙を上げて瞬時に固まります。まるで溶接をしているかのようです。スポット溶接のように3か所を点で繋げると母材のぐらつきも無くなるくらい強固に固まります。

接着剤はAmazonに売っているシアノンSWというものです。50g入りで1100円とコスパがとても良いです。アロンアルファが2gで500円くらいなのでコストは10分の1くらい。ただ、これは口がすぐに詰まってしまうのがネックですね。穴が詰まったら先端を液に突っ込んで軽く振って湿らせて塗りつけるような使い方をしています。

セメントは25kgで500円程度なので、ノーコストと考えていいと思います。

割れた瓦も完全復活。

釘穴の小さなクラックもこれで治せますね。

瓦にシリコーン灯油を塗ってみる

前回の記事に書いたやつです

シリコーンシーラントを灯油に溶かしてペンキのように塗ると、とても強固な防錆防水皮膜になるとYoutubeの動画を見て知りました。

これを瓦に塗ったらすごく良いんじゃない!と思い試してみました

シリコーンと灯油の比率は1 : 1.5くらいが良いそうです

コーキングを半分の165gと灯油250gで溶かして420gの塗料を作ります

これで瓦20枚くらい塗れます

ざっくり費用の計算をすると、コーキング520円 + 灯油80円 で40枚の瓦を塗れる。瓦の枚数約1800枚。600円×(1800÷40) = 27,000円

これは超リーズナブルです

もちろん耐久性次第ではあります。

1年もしないうちに剥がれたり、変色したりする可能性もあるので、実験的ですね。

作りすぎると塗ってる間に硬化が始まるので少量ずつ作ったほうが良いです

また、制作に5分くらい混ぜないといけないのがネックです

塗ったところは雨上がりでも真っ白。遮熱性も高そうですね。

水をとても弾いてます

乾いたシリコーンの上にシリコーン灯油を上塗りできることは確認しました。

あとは変色したスーパーファミコンみたいな色にならないことを祈るのみです

そして、ここで問題が発生

撥水性が良くなったせいでシリコーンを塗ってない瓦の重なり部分に水が吸い込まれるようになりました。毛細管現象らしいです。セメントを塗り境界が狭くなっているため、中に水が溜まって出てきません。

これは防水したせいで逆に屋根や瓦の寿命を縮めてしまうのではないかと心配になり、対策を行いました。

瓦の隙間に埋まったセメントをスクレーパーで削ります

これがとても気の遠くなる作業。丸1日掛けて50枚削れるかどうかと言った感じ。塗る前にマスキングか何かをしたほうが良かったですね。

ドアストッパーがこんなところで役に立つとは

削ったあとも水が出てこないようなのでスペーサーとしてつまようじを差し込んでみました

良い感じに水が抜けるようになりました

つまようじより竹ようじが長持ちしそう

やや長いのでカットして使ってます

3年前、瓦にセメントを塗っていた変人は、瓦につまようじを挿し始めました。

瓦は難しい

瓦は本当に難しいと実感しました

瓦は傘であって、合羽ではない。傘は雨を防ぎ、日傘にもなるが、足が濡れてしまう。合羽は雨を完全に防ぐことはできるが、日が照ると汗だくになってしまう。屋根瓦も湿気が逃げる場所が無いと中の板を腐らせてしまいます。

雨に関してはそうなんですが、風となるとまた話が変わってきます。台風の時に傘をさすと吹き飛ばされてしまいます。この小さな隙間が、台風時に揚力を生んでしまわないか心配です。前回の大型台風で無害だったのは、セメントでガッチリ固めていたお陰かもしれません。

いや、でも塗ってない部分も無害だったか(思考放棄)

光触媒?

どうせ、白い屋根にするならば光触媒コートにできないかなと色々調べてみました。

シリコンをバインダーにするとかいう論文を読んでみたり、酸化チタンの粉末を購入してみたり(500gで5000円もした!)

酸化チタンを塗布した皿に日光を当てて醤油の色を落とす実験をしてるのですが、なかなかうまく行きません

最初はコップで実験したら上手くいかず、chatGPTに理由を聞いてみると食器用ガラスはUVを通さないと教えてもらいました。それで皿に変えてみたのですが、結局うまく行かず・・・

顔料として売られていたものなので、偽物でも掴まされたのかなとガックリきてます

おわりに

とまあ、こんな感じで今も楽しみながら屋根瓦のDIYメンテをしています。

セメントを塗った効果があったのかと言われれば、クラックの進行を止める効果があったと言えます。でもそれでは完璧では無く、瓦を外してエポキシパテでクラックを埋めて、シリコンを塗るという作業に追われています。あとタガネで境界を削る作業もorz

8月末の台風明けから50日間、1日も休まず外で作業をしていますが、自分にはこんな体力があったんだなと驚いています。

ご先祖様には感謝ですね!ノシ(どういう締め方)

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